highriseの日記

自転車に乗ったり、外れ馬券を買ったりしている。

Tour de Suisse 2011 〜クネゴ師匠が愛される理由〜

これは記録しておくべき出来事だと思うので、ブログに書いておこうと思います。
ツール・ド・スイス(TDS)は7月のツール・ド・フランス(TDF)に向けて、総合優勝を狙う選手の最終調整レース。スイスを舞台に全9ステージで争われます。平坦ステージあり、山岳ステージあり、タイムトライアルありの全9日間のステージレースです。
昨年のTDSの勝者であるシュレク兄弟の兄フランク・シュレクをはじめ、TDFで2年連続総合2位の弟アンディ・シュレク、5月のツアー・オブ・カリフォルニアで総合2位だったリーヴァイ・ライプハイマーバスク一周を勝ったアンドレアス・クレーデンなど、まさにTDFへ向けた最終ステップといえるメンバーが揃っていました。
しかし魅せる走りをしたのがぼくたちのダミアーノ・クネゴ
wikipedia:ダミアーノ・クネゴ
若くしてジロ・デ・イタリアを勝ったことのある選手です。が、2ch実況スレのまとめでは、
YougoSyuu - tdf wiki

師匠
イタリア師匠ことランプレのエース、ダミアーノ・クネゴのこと。
弱冠22歳でジロ優勝、イタリア人若手のホープといわれて久しいオールラウンダー。
ジャパンカップを2勝しており日本にもファンは多い。
元々クライマー脚質のため近年は肉体改造に取り組み、それが裏目に出ているのか肝心の山岳でずるずる後退するシーンが多い。
期待と実績がなかなか伴わないため、似たようなもどかしい走りを見せるバルベルデとともに師匠と命名されている。
だが2009年ブエルタでは、ついにステージ2勝と復活の兆し。
しかし2010年はいつも通りの師匠っぷりに加え、ツールでは別の意味でやらかしまくってしまった。

というように、いわゆる愛されキャラです。そんなクネゴ師匠が記憶に残る走りをしたのが今年のTDSでした。
第1ステージの7.1kmの個人タイムトライアルは、現在のロードレース界において、タイムトライアルでは敵なしの宇宙人カンチェラーラが貫禄のトップ。タイムトライアルは宇宙人とその他大勢の人類の時計比べであり、タイムトライアルで2位すなわち人類最速と言われるほど圧倒的にタイムトライアルで強いのが宇宙人カンチェラーラです。カンチェラーラにとってはスイスは母国。そして、総合でカンチェラーラがトップに立ちます。
さて、クネゴ師匠ですが、第2ステージのゴール前の山岳でがんばって、ステージ2位に入り、総合でも2位へ。お、クネゴ師匠がんばってるね、という感じでした。
第3ステージは1級山岳を越えた後に超級山岳を越える山岳ステージでしたが、クネゴ師匠は超級山岳の登りで逃げ集団を一人で追いかけ、超級山岳の頂上手前で前を行く選手を全てスイープ。あとは10km強を下ればゴール。しかし、下りでリクイガスサガンが追いついてきて、ゴール前のスプリントで差されステージ2位。
やっぱクネゴ勝てねぇwww
クwwwネwwwゴwww
といった風情です。クネゴ師匠健在でした。
それでも後続に差をつけたので、ここで晴れて総合1位、なにより逃げ集団をただ一人追いかけるクネゴ師匠は本当に力強く、かっこよかった。
第4ステージ、第5ステージは平坦コースなのでスプリンター達の出番。総合優勝を狙う選手達の間でタイム差がつくことはなく、第6ステージ、第7ステージは山岳でしたが、タイム差にそれほど大きな変動はありませんでした。第8ステージはまたまた平坦コースで、サガンやゴスと言ったスプリンター達のゴールスプリント合戦。
そんなわけで、8ステージを終えての総合成績はこんな感じ。

順位 名前 タイム
1 ダミアーノ・クネゴ(ランプレISD) 31:01'49
2 ステフェン・クルイスウィック(ラボバンク +1'36
3 フランク・シュレクレオパード・トレック +1'41
4 リーヴァイ・ライプハイマーチーム・レディオシャック +1'59
5 バウク・モレマ(ラボバンク +2'11

いよいよ最終ステージ、32.1kmの個人タイムトライアル。シュレク兄弟のTT残念っぷりは今に始まったことではないので、フランクの2連覇は望み薄なわけですが、上位陣ではタイムトライアルに強いライプハイマークネゴから1分59秒差のところにいます。30kmあるタイムトライアルなら、逆転があってもおかしくないタイム差とはいえ、それでもさすがに逆転するのはちょっと厳しいかな、まぁクネゴが守り切るんじゃないかなという雰囲気。
総合成績で下から順にスタートなので、宇宙人カンチェラーラは早々にスタートし、41分1秒というタイムでゴール。しかしカンチェラーラは総合には関係ありません。この人は宇宙人なので、タイムを楽しめばいいのです。
そして、総合上位陣が続々とスタート。
まず、第1計測地点のタイムは以下の通り。

名前 タイム
ライプハイマー 11'22"53 (±0)
シュレク 11'49"18 (+0'27)
クルイスウィック 11'41"01 (+0'19)
クネゴ 11'50"77 (+0'28)

この時点でライプハイマークネゴ師匠に対してすでにタイム差を28秒縮めていますが、これぐらいならまぁ大丈夫でしょう。昨日までにタイム差を稼いでおいてよかった。なんとかリードを守り切れそうじゃないか、そう思っていました。
さて、第2計測地点。

名前 タイム
ライプハイマー 31'08"24 (±0)
シュレク 33'14"85 (+2'06)
クルイスウィック 32'23"11 (+1'15)
クネゴ 32'34"21 (+1'26)

ライプハイマーが1分26秒もタイムを詰めており、実況スレやTwitterは一気に不穏な空気に。ここまでの30分で約1分30秒を縮めたわけで、残り10分ほどあれば30秒ほど詰めるのは不可能ではないかも……
それでも、それでも、なんとかなる。ぼくたちのクネゴ師匠なら一桁秒差でも凌ぎ切ってくれる、そう信じていました。
そして、一足先にライプハイマーが41分14秒でゴール。つまり、クネゴ師匠が43分13秒以内でゴールすれば総合優勝です。ここまでの差の詰められ方を見ると、ギリギリ勝てるんじゃないかというところ。クネゴ師匠の必死さが画面からビンビン伝わってくるし、この10分は本当にワクワクテカテカ、ドキドキドキドキ、なんとかなる、なんとかなる、手に汗握るとはこういうことです。
さぁ、クネゴ師匠がゴールに近づき、あ、これはいけるか、最後の直線に入ってゴールからクネゴ師匠が見えた、間に合ったか、ギリギリいけるか、というところ、ゴールまでほんの少し、ゴールはもうそこに見えているのに無情にも時計は43分13秒を過ぎ、クネゴ師匠は43分17秒でゴール。クネゴ師匠の様式美が炸裂した瞬間です。
クネゴ師匠さすがですwww
総合成績は以下の通り。

順位 名前 タイム
1 リーヴァイ・ライプハイマーチーム・レディオシャック 31:45'02
2 ダミアーノ・クネゴ(ランプレISD) +0'04
3 ステフェン・クルイスウィック(ラボバンク +1'02
4 ヤコブ・フグルサングレオパード・トレック +1'10
5 バウク・モレマ(ラボバンク +2'05

たった4秒差で総合優勝が逃げていったのでした。
ぼくは画面の前で腹を抱えて笑い、2chの実況スレは芝で埋めつくされていました。白熱のタイムトライアルでした。
終わってみれば、タイムトライアルでカンチェラーラから13秒差しか遅れていないライプハイマーががんばったということなのでしょうが、クネゴ師匠のなんとも記憶に残る敗戦、ゴール後の茫然自失なクネゴ師匠、表彰式で目が死んでいるとはこういうことだと見せつけてくれたクネゴ師匠、やはり愛されるにはそれだけの理由がある、と強く感じたTDSでした。