highriseの日記

自転車に乗ったり、外れ馬券を買ったりしている。

2018 Cascade 1200 Day 3 : Windy! Windy! Windy!

目が覚めてスマホで時計を見ると8:20。やってしまった。また寝坊である。二日連続だ。6:30ぐらいに起きるつもりだったのに。そもそもQuincyのオーバナイトコントロールのクローズ時間は8:04なので、クローズ時間を過ぎている。超焦った。前日に引き続き、慌てて寝袋を片付け、慌てて朝食を食べる。Thomasさんや平野さんがおられたが、二人ともすでにDNFされているのでのんびり談笑している。その横で慌てて準備をする。

準備が整ったのは9:00。借金1時間で3日目がスタートである。左に写っているのはEvanさん。片方のアームカバーを忘れている。疲れてたらしい。

3日目のコースは以下の通り。

Quincyを出て、農場エリアを東の方へ行く。次に見えてくるのはEphrataという町。この町を抜けると長い長い無補給区間になる。途中Farmerというところで有人コントロールが設定されているが、商業施設は約100km先のBridgeportまでない。Bridgeportまで辿り着くとOkanogan River沿いに走ってMallotのコントロールへ。そして30km近く登ってLoup Loup Passを越えるとTwispの町に出て、緩やかな登り基調の道を行くとMazamaのオーバーナイトコントロール。約250km。

Quincyには他にもまだスタートしていない参加者の方がいたが、あんまりグズグズしていても仕方がないので一人でスタート。600kmを超えて制限時間は緩くなっているし、距離も250kmぐらいだし、大きな登りはLoup Loup Passだけなので、そんなに大変な一日にはならないだろうと甘く見ていた。が、思ったほどペースが上がらず、200kmの通過に13時間20分ぐらいかかるという、普段のブルベならギリギリ隊のペースであった。

スタートしてしばらくは農場の中を行く。スプリンクラーがグルグル回っていて、飛んでくる水が気持ちよい。

アクションカムのバッテリー切れ

そしてここで痛恨のミスが判明。アクションカム用のバッテリーが死んでた。今回は一日につき一本の外部給電のバッテリーを用意してドロップバッグに入れてあったのだが、1日目、2日目用のものは新しく購入したものなので特に問題なし。ただ、3日目と4日目のは以前から使っていたもので、九州のヘブンウィークで水没したときにダメになっていたらしい。なので、3日目と4日目の動画は途切れ途切れになってしまった。残念。切り出す動画がないので、ここから一気に写真が減ります。

Ephrataの町を通過して、100kmほどのアップダウンアップダウンアップダン……の区間に入る。

余談だが、帰国してから英会話教室ワシントン州出身の講師の方と、

「Seattleに行ってきました。1200km走ったんですけど、カスケード山脈の東側の荒野の地域も走ってきました」

「自分はまさにその地域の出身だ」

「Quincyっていう町に泊まって……」

「オー、私はMoses Lakeという町がホームタウンなのだがその近くの町だ。Quincyは農場しかない町でboringだけどな。でも、土地代が安いのでMicrosoftとかのデータセンターがあるぞ」

「ほんで、Ephrataっていう町を通過して……」

「オー、Moses Lakeにいた頃、しょっちゅう飲みに行ってた町だ。っていうか、何年も英会話の講師をやっていて、何千人という生徒を見てきたが、Ephrataに行ったという日本人は初めて見た」

「そりゃ自分だってブルベじゃなかったらこんな町行かねーわ」

というやりとりがあった。

そしてQuincyに着く前に酷いサンダーストームに遭ったという話をしたら、Washington州は落雷によるwildfireが多い地域なんだと言っていた。なるほど~。

ちなみにMoses Lakeは通過していないのでどれぐらいの町なのかわからないが、昔はJAL、今はMRJ関連で日本人が結構いるそうな。

トイレがない問題

Ephrataを後にするとまた昨日と同じようなダイナミックな景色になる。暑さと疲労で知能が低下していたので、景色に圧倒されて「ワーオ」って言うだけの人間だった。「おーすげえ」じゃなくて、なぜか「ワーオ」って言ってた。だいぶ知能が低下している。

で、Ephrataを通過するとBridgeportまでの約100kmの間、トイレがないのが問題である。途中のFarmerというところにコミュニティホールを使ったコントロールはあるが、コミュニティホールにはトイレがないとキューシートに書いてある。単独で走っていて前後に誰もいないと、「地平線の先まで見渡す限り人間は自分しかいない」というような場所なので、大きい方を催してしまったときにどうするのか覚悟を決める必要がある。ちょっとでもいいから道路からの視界を遮る茂みがないかなぁと探しながら走る。いざとなったらやらねばなるまい。

そして「こんな雄大な景色の中で数字なんて気にして走るもんじゃない。もっと自然を感じて走ろう!」と思って心拍計を外した(ただ乳バンドが鬱陶しくなってきただけである)。また、GARMIN eTrexとは別に速度、心拍とケイデンスを表示させてたサイコンの電源が切れてしまったのだが、これもまた数字なんて気にして走るもんじゃないと思って電源は切れたままにしておいた(電池を交換するのが面倒臭いだけである)。とりあえずルートさえわかればなんとかなるやろ精神だ。

速度も心拍もケイデンスも、そんなものはどうでもいいんだ(アメリカの大自然の中で悟りを開いた)。

少し登ってしまえばずっと下りでFarmerのコミュニティホールに着くものだと思っていたが、アップ、ダウン、ダウン、アップ、ダウン、ダウンで下っていくので、全然ありがたみがない。そして絶賛向かい風である。

めっちゃわかる。

FarmerのコントロールのスタッフはSusanさんとTomocoさん(スタッフとして参加)だった。Tomocoさんにブルベカードにサインしていただいたので、Cascade 1200のコントロールのサインに日本語が!貴重!

しばらく休憩。そこらへんにあるものをバクバク食う。カップヌードルの塩分が染み渡る。

と「今日も寝坊したらしいですね。スタッフの間で寝坊の人だと話題になってましたよ」

おおう、恥ずかしい。

コミュニティホールの周りにはマジでなんもない。ここに来るまで向かい風、ここからは横風……ウゥ……

RAAMに出るような人についていけるわけがない

そしてコントロールで一緒になったMicheleさんとChrisさんが一緒に行こうと声をかけてくださったので、一緒にスタートするわけだが……

あっという間に千切れてしまい、一人旅に戻った。しばらく一緒に走っていた間に話を聞いた限りでは、MicheleさんはどうもRAAMにソロ部門で出たことがあるらしい。そら強いわ。そしてMicheleさん曰く「ChrisはStrong man」(Crazy manだったかもしれない)とか言う。横風に耐えながら二人になんとかついていこうとするものの、どんどん小さくなっていくので、束の間のDay 3 Partnersだった。

一人で横風に辟易しながらアップダウンをこなしていく。途中8kmぐらい東へ向かって走る区間があるのだが、そこだけが追い風で天国だった。が、眠くて眠くて。ボーッとしていたので左折することをちょっと行き過ぎた。そしてまた北上なので、基本的に常に横から風を受けている状況。しんどい。眠い。うんこしたい。QOLが下がってきている。

Bridgeportの手前のChief Joseph Damが見えてきて、展望台はこちら!みたいな看板が目に入ったのでそちらへピットイン。たぶんトイレあるだろ!と思ったらその通りだった。助かった。

水洗化されていないし、もちろんトイレットペーパーもないが、一応トイレである。ウェットティッシュを持っているので問題ない。

Bridgeportの町にFoodがあるよーとキューシートに書いてあったので、たまたま通り掛かったEvanさんに「どうする?寄ってく?」と声をかけられたが、Farmerで十分食べたので自分は先に行きます。

ずっと風が強いのでスプリンクラーみたいなやつの水も横へ横へと飛んでいく。

Mallotまでは川沿いを行くのだから平坦だろうと思っていたが、それなりにアップダウンがあるし、そして眠さも出てきたので、Mallot到着時はヘロヘロ。自分の到着と入れ替わりでSan Francisco Randonneurs御一行が出ていくところだった。コントロールには自分だけになったので、スタッフの方が「サンドウィッチを作ってやろう!何を挟む?」と言ってくれたので、チーズやらハムやらを頼む。一時間近く休憩していたのではなかろうか。あんまりダラダラしているものだから、

「みんなさっさと出発していったけど、そんなに休んでていいのかい」

と言われた。「アッ、ハイ……」と準備をして出発。19:00ちょうどぐらい。Loup Loup Passのサミットまで30km弱あるので到着は22:00ぐらいになるなぁ。

世界が変わる

せっせと登る。何もないのでただひたすら登る。だんだん気温が下がって寒くなってくる。冬用の装備にチェンジだ。メリノウールのインナーやウインドブレーカーまで登場。ついさっきまでジャージの前を全開で走ってたのに。

やっとサミットに到着。想定通り22:00ちょうど。Twispまで下ってMazamaに向かうだけ。冬用装備なのにグローブだけ指切りグローブのままだったので(油断してた)、下りで指が千切れるかと思った。Loup Loup Passを越えると世界が変わる。トンネルを抜けると雪国だった!みたいな峠とかトンネルがあるが、そういう類の峠だ。

Twispのガソリンスタンドで一旦止まって休憩していると二人組がやってきた。一人は夏用レーパンのままだったので、さすがアメリカンは寒さに強いんだなぁと関心した。

「寒くないの?」

「寒いに決まってるだろ!」

やっぱり寒いらしい。3日目は暑いと思って冬用装備をドロップバッグに入れておくと死ぬパターン。

TwispからオーバーナイトコントロールがあるMazamaまでは35kmぐらいなのだが、ゆるーく登っているのでなんかいまいちペースが上がらないし、真っ暗で景色も楽しめないので、残り距離が減っていくのだけが心の支えであった。

Mazama到着は1:00頃。先に到着していた吉岡さんが食事中だった。毎晩オーバーナイトコントロールで人権のある温かい食事が提供されているので本当にありがたい。これがなかったら……?というのは想像したくない。3日目もかなり疲弊していたので、ドクターペッパーとかグビグビ飲んでた。

また、このオーバーナイトコントロールはロッジを借り切っていたので、仮眠を取る環境としても非常に快適だった。自分は二階のベッド二つの四人部屋が割り当てられた。到着しているのは自分だけだったので部屋のシャワーで人権を回復し、後から来た人の邪魔にならないよう、ベッドの一番端で寝ることにした。

とりあえず5:30のクローズと同時に出発するぐらいでいいかな……というつもりで就寝。